2007年 開催報告Atomistix Workshop in Japan

“FCSNT2007”開催のご報告Frontier in Computational Science of Nanoscale Transport2007

2007年6月東京理科大学 森戸記念館にて”Atomistix Workshop in Japan 2007”を開催いたしました。本会議は東京理科大学様と東京大学様のご協力の下、International Symposium on "Frontier in Computational Science of Nanoscale Transport2007"(略称FCSNT2007) と名付けられた輸送計算問題に関するシンポジウムの一環として行われました。

本国際シンポジウムでは、ナノスケール構造の量子輸送現象の中で、特に電子輸送とフォノンやスピン自由度を伴う輸送現象に関する計算物理学・化学的研究の最近の発展に焦点を当てました。Co-Chairは、東京理科大学の渡辺一之 教授、東京大学の渡邉聡 教授、Atomistix社のKurt Stokbro博士が務めました。

”Atomistix Workshop 2007”には、これらのトピックスに関心のある全ての研究者や技術者が参加され、Atomistix社製品のデモンストレーションやロードマップに関する報告も行われました。

招待講演では、早稲田大学の塚田捷 教授、九州大学 吉澤一成 教授、名古屋大学 井上順一郎教授が招かれました。また国外からはアラバマ大学のW.H. Butler教授、デンマーク工科大学のM. Brandbyge准教授が来日され、ナノスケールの輸送計算に関する、質の高い議論が展開されました。

全講演は19件の口頭発表と33件のポスター発表から成り、総参加者数は95名でした。

開催概要

主催 東京理科大学総合研究機構 ホリスティック計算科学研究センター
東京大学 計算材料学研究室
Atomistix A/S
サイバネットシステム株式会社
日時 平成19年 6月 7日(木) - 8日(金)
場所 東京理科大学 森戸記念館(〒162-0825 東京都新宿区神楽坂4-4-2)
参加者 産官学より95名
詳細 http://fcsnt2007.cybernet.jp/

FCSNT講演内容

会議1日目は電子輸送に関する2つのセッションと、熱伝導に関する1つのセッションが行われました。

電子輸送に関する2つのセッションで招待講演をして頂いた塚田先生、Brandyge先生の講演内容の概要は下記の通りになります。

1. 塚田 捷
(早稲田大学 大学院理工学研究科 教授)

タイトル Coherent and non-coherent features of electrontransport nano-structures
内容 塚田教授は、ポリマー構造や層状構造をもつ分子デバイスのコヒーレントな伝導特性について講演されました。また、コヒーレントな伝導と散逸伝導の中間領域における伝導特性についても議論されました。

2. Mads Brandbyge
(デンマーク工科大学 ミクロ・ナノテクノロジー学部 准教授)

タイトル From atomic/molecular conductors towards semiconductor nanowires studied by the NEGF/DFT method
内容 Brandbyge准教授は、DFT/NEGF法を用いて計算した1.C60の弾性・非弾性伝導、2.カーボンナノチューブ電極と有機金属錯体の複合構造によるスピンフィルター、3.シリコンナノワイヤーの伝導特性、について講演されました。


左:塚田 捷教授ご講演の様子、右:Brandbyge准教授ご講演の様子

また招待講演以外に4件の発表があり活発な議論が展開されました。

続くセッションでは、熱伝導に関する話題として3人の若手研究者にそれぞれ発表していただきました。それぞれ、カーボンナノチューブでのバリスティック熱伝導、カーボンナノチューブでの散逸−バリスティック熱伝導、および非線形格子模型における熱伝導についての発表があり、活発な質疑応答がありました。

オーラルセッション終了後にポスターセッションが行われました。ポスターセッションでは、33人の研究者の方に発表していただき、各ポスターの前で活発な議論が展開されました。

会議2日目は、スピントロニクス関連のセッションと電気伝導に関するセッションが設けられました。

午前中のスピントロニクス関連では井上先生、Butler先生に招待講演をして頂きました。講演内容の概要を下記に示します。

3. 井上 順一郎
(名古屋大学 工学研究科 教授)

タイトル Novel electron-transport in spintronics
内容 井上教授は、拡散伝導領域における異常スピン伝導(AHC)および異方性磁気抵抗(AMR)の特性について講演されました。

4. William H. Butler
(アラバマ大学 物理学/天文学科 教授)

タイトル Modeling spintronic materials
内容 Butler教授は、トンネル磁気抵抗素子やMRAMなどへの応用が期待されるスピントロニクス分野について最新の電気伝導理論計算を講演されました。


左:井上順一郎教授ご講演の様子、右:Butler教授ご講演の様子

また招待講演以外に3つのスピントロニクス関連の電気伝導計算の発表があり、活発な議論がありました。

午後のセッションでは再度電子輸送に関する話題が取り上げられ、1つの招待講演とAtomistix社開発スタッフによる講演がありました。招待講演をして頂いた吉澤先生の講演内容の概要は下記の通りです。

5. 吉澤 一成 (九州大学 先導物質化学研究所 教授)
タイトル Frontier orbital concept for the electron transport in molecular nanowires
内容 吉澤教授は、分子デバイスの伝導特性とフロンティア軌道(HOMO/LUMO)の重要な関係性について講演されました。


吉澤 一成教授ご講演の様子


会議一日目に開催されたポスターセッションの模様と(左)、懇親会の模様(右)

Atomistix社製品のロードマップ

FCSNT会議内ではAtomistix Workshop 2007が同時開催されました。国内でAtomistix Workshopが開催されることは今回が初めてとなります。Atomistix Workshop 2007では、Atomistix社のScientific Application SpecialistであるJose A.Torres博士から次期バージョンであるVirtual NanoLab 1.4のデモンストレーションや、Atomistix社の創立者Kurt Stokbro博士よるAtomisitix ToolKitのロードマップに関する講演がありました。以下に概要を示します。

1.Virtual NanoLab 1.4のデモンストレーション

会議1日目の最後の講演として、Atomistix社のTorres博士によるVirtual NanoLab(VNL)のデモンストレーションが行われました。本デモンストレーションではAtomistix社が現在開発を進めている、次期バージョンVNL1.4の新機能を中心に行われました。VNL1.4では新機能としてMolecular Builderが加わり、この機能によって計算に用いる分子を簡単に構成することが可能になります。

2.Atomistix ToolKitロードマップ

Atomistix社の創立者Kurt Stokbro博士からAtomistix社製品のリリーススケジュールについて発表がありました。まず次期バージョンであるATK2.2とVNL1.4 は2007年6月末に同時リリースされることが報告されました。また2007年末までにVNL2.0がリリースされる計画です。本リリースがVNLの機能革新に関する大きな変革の第1歩と位置づけられています。VNL2.0から、ATKの全ての機能がVNLに統合されることで、使い勝手が大幅に向上するものと期待できます。2007年から2008年にかけてのATK及びVNLのリリーススケジュールを表1に示します。


表1 ATK及びVNLの開発スケジュール

次にATKの新しいインターフェースであるNanoLanguage(NL)が紹介されました。NLはPython言語をベースとしたスクリプト言語で、NLを利用することにより、自由度の高い計算操作を実現することができます。これは、次世代の量子計算プログラムと呼ぶにふさわしいコンセプトといえます。NLを中心として、ATKとVNL、またデータベースや、3rd Party製品が有機的に連携し効率の良い計算環境が構築される予定です(図1)。


図1 NanoLanguageを中心とした計算環境のイメージ

次にAtomistix社製品の機能面の向上に関しても説明がありました。FCSNT会議内でStokbro博士は”大規模量子輸送計算のための革新的アルゴリズム”を発表しました。本アルゴリズムを搭載したATK2.Xでは現行のATK2.1よりも2倍以上計算速度が向上するとのことです。同時に擬ポテンシャルの改善にも取り組んでおり、一層の精度向上も見込まれます。

また、次期バージョンのATK2.2ではNudged Elastic Band法が追加され、ATKを用いて化学反応のシミュレーションが可能になります。更にATK2.3では散乱状態が扱えるようになり、これによって二つの電極間に架橋された分子に流れる電流の密度分布の解析が可能になる予定です。

以上

なお、今後のAtomistix社製品の機能拡張についてご興味があれば弊社までご一報ください。現在Atomistix社では、新規製品実現に向けてのコンソーシアムや、新しいプロジェクトが発足しており日本からのコンソーシアム参加も見込まれています。

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